先回のブログ、「経口避妊薬を求めて」に対して、とても参考になる連絡を頂いた。
 アロハが生まれた頃、ハンドリング講習会で知り合ったヴィクトリアのオーナーさんからだ。当時ショーで走っていた、サーシャと同じコートカラーのアフガン、ヴィクは、去年、13才で他界し、今はその子供たち9頭と暮らしている。うち3頭が牝でインプラント避妊中とのこと。
 タバコフィルターほどのプロゲステロンチップを3本皮下に埋めているという。チップから薬剤が少しずつ放出され、シーズンを継続して抑える仕組みだ。本来のホルモンバランスに影響を及ぼすため、副作用として、子宮疾患になりやすい傾向があるといわれるが、今のところヴィクの娘たちは3頭とも問題はなさそうだ。
 東京でも、インプラント避妊は一般的ではなく、自然派志向のヴィクのオーナーさんは、かかりつけの獣医さんに偶然恵まれてこの避妊法が可能になったらしい。
 インプラント避妊にしても、局所、場合によっては全身麻酔での手術が必要であり、11才になろうとしているリリーにはうまくいくかどうか考えてしまった。
 それ以前に、インプラントであれ経口であれ、臓器摘出しない避妊法を行っている獣医さんは仙台近郊でまだ見つかっていない。
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 一方、サーシャはこれまでになくヘビーなシーズンを2月22日過ぎにようやく終えた。この間とても大変だったらしく、散歩意外はぺったり床に伏せていることが多かった。
 変化はその後も続いている。多飲と頻尿だ。
 これまで排泄は外でしかしなかった彼女は尿失禁をし始め、間も無くリリーとアロハに倣って、トイレシーツにするようになった。朝、晩の散歩の他、夜間、午前、午後、各一回ずつしている。水をよく飲んでは排尿の繰り返しだが、どこも苦しがる様子はなく、食欲旺盛で便の性状も異常はない。
 困ったことは、汚れたシーツをその都度確認するように嗅ぐため、耳の毛に匂いがつく。犬に服や靴を履かせる趣味のない私は、スヌードもできるだけ被せたくないため、久々に毛をカットすることにした。ただ、以前の大胆な全身のハサミ刈りではなく、今回は慎重にトライした。これが最後になるかもしれないという思いが過ぎったから。
 まずは耳の内側から前胸部にかけて、浮いた毛をバリカンで丁寧になぞった。刃を肌に押し付けず、毛の流れに沿って進めると意外にうまくできた。最後になるかもしれないこの時はじめて、犬のバリカンカットのコツを掴んだようだ。

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 サーシャが2月になってヒートを迎えた。彼女は2013年8月、乳腺腫瘍で、右側の第4から5乳房を切除して以来、ヒートが不規則になっている。今回は1年以上の期間を置いて久々にヒートを迎えた。サーシャは11才という年齢でもあり、離れた静かなところで横になりたがり、いつになく辛そうだった。結局、2月5日から22日まで出血があり、17日以降は濃厚なフェロモン臭とともに淫部がこれまでになく肥大化した。
 6才になるリリーの息子アロハは、去年の11月のリリーのヒートの時以上に、サーシャに夢中になってしまった。とにかく排尿の数が多く、常にサーシャのそばに居ようとする。部屋を別にしても扉をガリガリ引っ掻き、近くに寄れるまで哀れな声を響かせる。サーシャは立っているとアロハにモーションをかけられるため、室内ではハウスの中か狭いところへ入ろうとするが、アロハは諦めない。
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 私は犬に対しての去勢手術はまだ受け入れられない。
 理由は大きく二つある。一つは、以前、去勢したオスのラブラドールを見たことがあり、それが魂の抜かれた肉の塊に見えたからだ。他の犬が近寄っても関心を示さず、ただ呆然とし、至近距離になると突然吠えて反撃する。体は動くのが容易でないほど肥満状態だった。犬のオスの去勢は、私にとって本能除去の残酷行為に思えた。
 二つ目に犬は猫と違って、受精後排卵ではない。卵子と精子の生命期間が一致して受胎可能となる。人間と同じタイプだ。ネコは交配行為が刺激となって排卵されるため、受胎は確実になる。このことは、リリーをブリーディングするときに偶然知った。つまり、イヌはネコ目に属するが、繁殖システムが異なるということ。進化の途中で、群れをなし始めたイヌ科動物は、繁殖システムにも変化が生じたのだろう。
 そんなことを考えながら、ウェブサイトでイヌの避妊を調べてみると、経口避妊法があるようだ。イヌの場合、排卵をコントロールするのではなく、発情を抑えるようにホルモン剤を経口投与したりインプラントとして皮下に埋め込む方法があるという。
 早速、近隣の獣医さんに問い合わせしたがほぼ全面断られた。「うちは手術しかやってません」。
ただ一ヶ所、理解を示してくれた回答を得られたところもあった。「インプラントを外したことがあるが埋め込んだことはない。どうしても必要と言うのならば大学に戻った時情報を集めてこないといけない」。



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 2017年はおだやかな気候から始まった。アロハが戻って初めての正月になる。
 彼はすっかり私たちの生活に馴染んだようだ。欲しいものがあると寄ってきて、顎を近くにもたれ、いつまでもじっと見つめている。
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 リリーは夜中、トイレシーツが汚れると、私を起こしに来る。
サーシャは室内で決して排泄しないが、リリーとアロハはよく水を飲み、排尿の回数も多い。朝晩散歩に出ているにもかかわらず、特に寒くなると、一晩でリリーは1回、アロハは2回くらいの頻度だ。
 2年くらい前から、私はトイレシーツが汚れたらすぐ取り替えるようにしていた。それを続けていたら、リリーは夜、自分で済ませた後、寝室に来て歩き回り、私を起こすようになった。眠い目をこすりながら名前をよぶと、彼女は大きく尾を振り、鼻先を来て欲しい方向に向ける。行ってみるとシーツに黄色い跡がある。それを新しいものに取り替えてやると、彼女は満足げに自分の寝床に入る。
 アロハが戻ってから、彼は雄のため、壁に向かって放つので、私は壊れたパネルヒータにトイレシーツを貼り付け、床に敷いたシーツの上に立てている。彼はそれに向かってうまく用を済ませるが、そのあとで汚れた部分を鼻先で外し、畳み込もうとする。うまく行けばいいが、時には裏表が逆になり、努力してもかえって収拾がつかない。そうすると、きれいな部分まで巻き添えになり、あたり一面シーツが引っ掻き回された状態になってしまう。
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 3頭の中でリリーは一番細くて小柄であるにもかかわらず、いつもクィーンだ。食事時、私たちの足元でおこぼれを待ちながら伏せているのは彼女で、サーシャとリリーが近寄ると低い唸り声をあげながら睨む。彼らは遠くでこの華奢なクィーンが場を空けるのを待っている。
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 3頭を連れての移動は車が多い。
 アフガンのサーシャは、座席を倒した荷台に乗り込むと横になり、そのまままったりとしている。
 一方、サルーキのリリーは落ち着かない。外をあちこち見回しては、後ろから助手席へ、また戻ったりの繰り返し。いつの間にか気に入った場所で毛布にくるまって丸くなっている。
 リリーの息子アロハが来たら、彼は助手席がお気に入りらしい。足元のスペースに台を入れて前足を伸ばせるようにしてやったら、大きな体を伏せ、顎をフロントパネルにもたれて進む方向を眺めている。運転席から見ると、隣に誰かが乗っているみたいだ。彼も自分が私と同じ生き物だと思っているのかもしれない。

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 この季節、銀杏の木の下がとても明るい。大木の周りに黄色の落ち葉がさっくりと積もっている。雄株の周辺を歩くと、強烈な匂いの実がない分、銀杏葉のみずみずしい香りがする。
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 犬たちにとってはその実のほうが好きなようだ。
 以前、うっかり雌株の木のそばを通ったことがある。目敏いリリーが一粒食べ始めたら、サーシャもアロハも落ち葉の中に鼻先を入れ、あの匂いを求めて夢中になって動かなかった。
 私たちが納豆やチーズを好むのと似ているところがあるのかもしれない。
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 11月5日から9日まで、アロハは一食も取らなかった。
 いよいよ恐れていたリリーのヒートが来てしまったのだ。彼はそれにぞっこん夢中になり、朝早くから夜中まで、リリーが動きを変えるたびに、吠えたり唸ったりを繰り返した。大変だったのはマーキングの回数。オシッコシーツを日に何度取り替えたか数え切れない。
 リリーは一切拒否を続け、バリケンの奥に避難した。
 部屋を別にしてもアロハはどこまでも着いてくるほどの勢いがあり、私の声など彼の心に届かない様子だった。
 結局丸一週間、うち5日は絶食状態で、アロハは本能の嵐に巻き込まれていた。周りがほとほと疲れ果てた頃、彼の嵐は食欲と入れ替わるように速やかに鎮まった。
 我に返った彼は、ようやく私の存在が一番になり、家では私の後をついてくるようになった。まるで遠くに行った息子が戻って来たような気がする。
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